高耐食性無電解Niめっき液「クオルニック」の開発
背景
無電解Ni-P合金めっき皮膜は耐摩耗性、耐食性に優れていることから、自動車、電子機器、航空機産業をはじめとして、広く利用されています1)。
電解ニッケルに比較して優れた耐食性を示し、中~高リンタイプの無電解Niめっき皮膜はクロムめっきに代わるめっきプロセスとして期待されています。
皮膜の耐食性をさらに向上させるため強い錯化剤の使用や合金化する手法がありますが、析出速度や皮膜組成の問題があり、実用化には至っていません。
そこで弊社では同一のめっき膜組成が連続して得られ、中リンと同程度の析出速度をもつ高耐食性の無電解Niめっき液「クオルニック」を開発しました。
参考文献
1) 電気鍍金研究会編;無電解めっき, p.59 (日刊工業新聞社, 1994)
サンプル作製方法及び評価方法
Table 1に標準使用条件を示します。
評価用サンプルは、鉄のハルセル板を用いました。Fig. 1に示す工程で無電解Niめっきを10μm施しました。
耐食性試験は硝酸溶液浸漬法として30%の硝酸溶液中における自然溶解量の経時変化を測定しました。
また、CASS試験はJIS規格;H8502に従って96時間実施しました。比較のため市販の高リンのめっき皮膜についても同様の試験を行いました。
めっき温度変化によるNiめっき皮膜特性
Fig. 2にめっき温度を80~95℃の範囲で変化させた場合の無電解Ni-Pめっき皮膜特性を示します。
Fig. 2よりめっき温度90℃以上では10 μm/hr以上の速い析出速度をもつことがわかりました。
表面SEM写真
Fig. 3に表面SEM写真を示します。
Fig. 3より「クオルニック」の皮膜表面は一般的な無電解Niめっき皮膜に比べて微小孔が少ないことがわかりました。
耐食性試験結果
Fig. 4に10分間30%硝酸溶液に浸漬した時の無電解Niめっき皮膜の溶解量を示します。
クオルニックの溶解量は一般的な無電解Niめっきの1/3以下であり、良好な耐食性を示すことが確認できました。
また、その耐食性は3ターン経過後も低下しないことがわかりました。
Table 2にCASS試験後の皮膜写真を示します。
一般的な無電解Niめっきは顕著な赤錆の発生が見られました。
表面光沢があることから高い耐食性をもつ皮膜であることがわかりました。
また、その耐食性が1ターン経過後も維持することが確認できました
まとめ
高耐食性無電解Niめっき「クオルニック」の析出皮膜は耐食性、耐薬品性に優れていることが確認できました。
また、「クオルニック」は析出性が良好で耐食性の良い皮膜が連続して得られることが確認できました。