フーリエ変換-赤外分光法(FT-IR)による有機物分析
概要
物質に赤外光(IR)を照射すると、物質固有の官能基の分子振動により特定の波数領域で光が吸収されます。
広帯域のIR光を連続的に試料に照射しスペクトルを得ることにより、物質材料を特定することが可能です。
測定対象物質は主に赤外吸収を伴う有機物質と一部の無機物質となります。
特長
■分析特長
1.試料サイズは数十μmから測定可能です。厚みはサブミクロン~10μm程度までが対象です。
透過測定及び反射測定が可能です。反射測定時には対象物質下部が金属の必要があります。
対象物質が樹脂上に存在する際には、金属板上にサンプリングすることで測定が可能になります。
50μm程度(目安としては肉眼で確認可能な)大きさであれば、概ねサンプリング可能です。
2.得られたスペクトルとライブラリー内のデータとの比較により有機物の特定が可能です。
ライブラリーデータでは種類の特定になるため、必要に応じて比較物の分析が必要となります。
3.マッピング機能があり、任意の波長に対してピーク強度に応じたカラーマッピングを取ることで成分分布像を取得できます。
4.試料の厚みや量などの調整を適正に行い比較測定を実施することで、樹脂の硬化の進み具合や成分の配合比率の違いなどについても検証することが可能です。
5.ATR(全反射法)により、樹脂最表面の分析を行うことが可能です。
ただし、サンプルは裏表両面で平滑であるなどの制約があります。
分析原理
分子に赤外線を照射すると分子内の結合ごとに振動・回転などのエネルギーに該当する波長の光が吸収されます。各波長の吸収をプロットすることで、スペクトルが得られ、物質の特定や官能基の特定が可能です。
主に指紋領域と呼ばれる1300cm-1~650cm-1に各官能基に応じた特徴的なピークが検出されます。同一分子でも温度や吸着状態などによりピーク位置や強度が微妙に変化します。
設備紹介
フーリエ変換赤外分光光度計 日本分光製 FT/IR-4600
赤外顕微鏡 日本分光製 IRT-5200
・分解能:0.5cm-1
・試料:高さ2cm程度までは装置に直接設置可能
・S/N比:42,000:1
・測定可能領域:7800cm-1~350cm-1(4000cm-1~650cm-1を主に使用)
分析用途
1.異物の分析
同一構造の物質からは、同一のスペクトルが得られるため、ライブラリー内のデータとの比較により、物質の特定が可能です。
金属などの無機成分の比較はできないため、別途分析が必要です。
2.樹脂やコーティング成分などの分析や比較
複数のサンプルの測定を行い、スペクトルを比較することで、同一物質であるかの判定が可能です。
時期や使用箇所などでの変更の確認、光沢異常などの解析が出来ます。
3.マッピング分析(有機膜有無状況や厚み変化)
スペクトル強度に応じたマッピング分析が可能です。
強度は樹脂の違いのほかに、分解・不純物の量・厚みなどに応じて変化します。
樹脂ごとの位置関係・コーティング厚みの変化などが視覚的に確認することが可能です。
設備機器紹介
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FT-IR