試料表面の状態を評価する「AES(オージェ電子分光分析)分析法」
概要
電子ビームを試料表面に照射し、脱出してきたオージェ電子を捉えることにより表面数nmの情報が得られます。
面分解能が数nmと高画像であるため表面・界面の微小領域測定に用いられます。組成評価・半定量評価が可能です。
深さ方向測定はイオンビームエッチングを併用します。
組成評価や膜厚評価の場合は注意を要します。サンプルは主に導電性のものとなります。
特長
1. 極表面の組成分布
試料表面数nmという極表面の元素分布・組成情報を得ることにより
物質の接合界面などの状態を評価することが可能です。
2. 高面分解能観察
SEMレベルでの高面分解能画像観察が可能で像観察と表面元素分布像が
1:1で対応しているため解釈が容易です。
3. 深さ方向分析
イオンビームエッチングを併用し深さ方向の分析が可能です。
4. 化学結合状態分析
一部の元素の化学結合状態を観測可能です。
エネルギ緩和過程の違い
(a)特性X線、
(b)オージェ電子電子線照射とオージェ電子・二次電子発生領域
分析原理
電子ビームを試料表面に照射し試料から脱出してきたオージェ電子を測定します。
オージェ電子は試料表面数nmから脱出するため極表面の情報のみが得られます。
設備紹介
検出器は半球型検出器(SCA)を備えています。
SCAの特長としてエネルギ分解能が高く結合状態評価が容易ということが挙げられます。
【形態観察】
・励起源:電子線
・検出信号:オージェ電子
・面分解能:100nm~
・試料寸法:~ 60mmφ(これ以上の試料はカットして観察)
・試料高さ:≦ 8mm
【元素分析】
・分析の種類: 表面分析、深さ方向分析
・検出感度: 0.1%~(測定元素により異なる)
・分析深さ: 0.5~6.0nm
・深さ方向分析: 可能(主にArイオンスパッタリングを併用)
【サンプルの取り扱い】
・サンプルは導電性を有するものが良い
・サンプル表面には一切触れない(手袋着用し保管雰囲気にも注意する)
・深さ方向分析(プロファイリング)の最大深さ目安は100nm
・超高真空下での分析のため揮発成分の多い試料は不可
・測定領域・箇所の指示:顕微鏡などの拡大像とそのマーキングが必要
・サンプル表面の形状:分析領域とその周囲が平坦であること
オージェピーク(Survey)データ
深さ方向(Profile)データ
分析用途
・極表面の元素分布評価(元素組成・ライン分析・マッピング)
・微小異物分析(極微小領域に付着した異物分析)
・表面汚染評価
・膜質評価
・表面元素の酸化・結合状態