超音波顕微鏡(原理と特長)
超音波とは?
人間の可聴領域を超えた「高い周波数域の音波」のことです。
1917年にP.Langevinが潜水艦探知用超音波送受波器を発明したのが技術研究の始まりと言われています。(出典:音響工学講座 ⑧超音波 コロナ社)
超音波の性質
音波の伝搬速度は、伝わる物質の「種類」、「状態」、「温度」、「湿度」、「圧力」に影響されます。右図のように、気体中では減衰し易く、液体・固体中では効率良く伝搬します。また、音波は音響インピーダンスの異なる界面間で反射します。
また、光と同様に「音速度=周波数×波長」の関係があります。
光に比べると伝搬速度は非常に小さいので、光よりも低い周波数で短い波長を実現可能です。顕微鏡の観点から言えば、分解能の良い計測が可能なことを意味します。
波の性質を利用して指向性を高めることも可能です。
超音波顕微鏡とは?
原理:一定周波数の電気信号の送信波をパルス発生器でパルス状に整形後、トランスデューサによって、電気信号から機械振動(超音波)に変換します。
発生させた超音波を音響レンズによってサンプル観察面に照射します。サンプルからの超音波の反射波や透過波を再度電気的な受信信号に変換後、画像処理を行い観察します。
反射波を利用するものを反射型、透過波を利用するものは透過型と呼びます。
クオルテックでは、いずれの方式も対応が可能ですが、実用性の面から反射型を用いる場合が多いです。
超音波顕微鏡 観察の特長
観察の特長 No.1
試料の光学的な性質に左右されず、試料表面だけでなく、表面下の内部構造も非破壊で観察する事が可能です。
図は、ICパッケージを境界面毎に観察した事例です。
観察の特長 No.2-1
空気中の界面での反射が大きいことから、パッケージなどの空隙やクラックを高感度で観察できます。
図は、ICパッケージのボイドを観察した例で、赤および黄色の箇所に空隙が存在すると考えられます。
観察の特長 No.2-2
異常箇所(空隙など)の判定は、各箇所における超音波の反射波の形状から判定します。
一般に、硬い物質から柔らかい物質の界面では波形が反転します。図の観察界面はモールド樹脂からリードフレームへの界面で、硬い物質と硬い物質の界面のため正常であれば、波形は変化しません。
事実、図の「1」の個所では、波形が変化していませんが、「2」と「3」の個所では、波形が反転し、ネガディブ波形になっています。よって「2」と「3」は、異常箇所と判定されます。
観察の特長 No.3
X線透視顕微鏡では確認できない有機物の観察が可能です。
図は、ICパッケージの接着テープを観察した事例です。
保有している超音波顕微鏡
■Cモード走査型 高精度超音波顕微鏡
●メーカー:Sonoscan製
●品 番:C-SAM D-9000
●特 長:C-SAMとは、Constant-depth mode Scaning Acoustic Microscorpeの略。
音響特性が異なる材料界面では超音波が反射される特性を活かし、その反射波や透過波を解析することで、非破壊構造解析が可能。
X線による非破壊解析と異なり、下記の特徴があります。
●試料サイズ:400mm四方のプリント基板であれば設置が可能。観察可能な範囲は、縦300mm×横300mm程度。高さは5cm程度まで。
1.剥離、ボイドの鋭敏な検査が可能
2.任意箇所の観察が可能(Z軸方向)
3.有機物の観察が可能
パッケージICの剥離調査、樹脂内ボイドの調査、基板とめっき層の界面剥離調査。
信頼性試験と組み合わせることで、不具合発生の追跡調査も可能。
まとめ
今回は、超音波に関する基礎知識から観察の原理、基本的な特長をご紹介しました。
今後は、その他の分析事例、関連論文、弊社独自の取り組みなどを追加していく予定です。
設備機器紹介
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